自己愛性人格障害者(自己愛性パーソナリティ障害者)は職場内で特徴的な行動を繰り返します。
ターゲットを決めて攻撃する流れや、加害者から被害者への華麗な変化などなど。
自己愛さんの特徴的な行動パターンをこの記事ではご紹介していこうと思います。
労働者の精神不調の専門医である花谷心療内科クリニックの花谷隆志先生の論文「職場におけるハラスメントの病理構造」と自己の体験に基づいて解説していきます。
自己愛性パーソナリティ障害者の行動パターン
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は職場内で特徴的な行動をします。
それは以下の流れです。
- ターゲットの決定
- ターゲットを孤立させる
- 周囲の加担・沈黙が起こる
- 周囲へ被害者アピール
詳しく解説致します。
1.ターゲットの決定
まず、自己愛さんは理想の自分像を強く持っています。
あなたの職場の自己愛さんも強迫的に「全知全能の自分」である事に固執しているはずです。
しかし、現実はそんなにうまくいくわけもなく、自己愛さんは「理想の自分」と「現実の自分」の乖離に苦しめられて常にイライラしています。
そんな自己愛さんたちは「見下される」という感覚にとっても敏感。
人から見下される事を必要以上に恐れ、ほんの些細な事で「見下された!」と激昂します。
そのため、常に職場の誰か悪口や不満を口にしているはずです。
そんな自己愛さんのイライラを解消する方法は、ただ一つ。
ターゲットを決めて、その人の気持ちを台無しにする事で感じる優越感。
なので、自己愛さんは自分を保つためにも、常に職場内にターゲットを作る必要があるのです。
ほんと迷惑な話だな…。
さらに、ターゲットにされやすい人の特徴は以下の3つと言われています。
- 自己愛になびかない能力の高い人
- 自己愛に歯向かわない自己主張しない人
- 職場で少し浮いた存在の人
自己愛さんになびかない能力の高い人は、自己愛さんの羨望や怒りを生みやすいためターゲットになりがちです。
全知全能でいたい自己愛さんからすると、このタイプはコンプレックスを刺激してくる邪魔な存在なんですね。
また、自己愛さんに歯向かわない自己主張をしない人もターゲットになりやすいです。
これは、学校内のいじめと同じ。
何をされても反抗しない人は、こういった攻撃の対象になりがちです。
そして、少し意外ですが、「職場で浮いた存在」もターゲットになりやすいと言われています。
私の経験からも、このタイプがターゲットになる事は多かったなと感じます。
障害者採用の職員であったり、トンチンカンな新卒社員、体臭のキツイ同僚など…。
とにかく自己愛さんは、誰かターゲットがいないと生きていけないので、このように何かと目立ってしまう存在は攻撃されがちでした。
2.ターゲットを孤立させる
自己愛さんはターゲットを決めると、その人を孤立させます。
それも、巧妙に周囲をコントロールし、意図的ではないように自然と孤立させていくのです。
例えば、ターゲットの悪口を周囲の人に吹き込みます。
ある事ない事、「あいつは酷いやつだ」と、吹き込むのです。
周囲を巻き込む時の、自己愛さんの話術といったら本当に神業です。
自己愛さんは独自の思考回路を持っているので、事実を捻じ曲げてネガティブキャンペーンをしている事も珍しくありません。
何も知らな人が聞くと、ターゲットの事を「なんで酷いやつなんだ!」と思い込まされてしまいます。
そして、ターゲットは周囲の人と普段通りのコミュニケーションをとるのですが、妙な雰囲気に気づきはじめます。
ちょっと仕事の事を聞くだけでも、同僚たちに不快な態度をとられたり、避けられたりしだすのです。
自己愛さんは、このように周囲を巧妙にコントロールし、ターゲットを孤立させていきます。
結果、ターゲットになった人は精神的に追い詰められていきます。
3.周囲の人の加担・沈黙が起こる
このような事が繰り返されている職場では、自己愛さんの間違いを正す人はいなくなります。
自己愛さんの異常さに気づきながらも、ターゲットになりたくないあまりに周囲の人は加担したり沈黙したりします。
誰かがターゲットでいてくれている間は、自分はターゲットにならずに済むからです。
酷い考えのように思えますが、周囲の人も必死です。
4.立場が危うくなると周囲への被害者アピール
イジメていたターゲットが退職、または休職してしまい、自分の立場が危ないと思うと自己愛さんは「被害者」へと早変わりします。
私が以前勤めていた職場の自己愛さんは、権力者との面談が大好きでした。
直属の上司がターゲットの時は、そのさらに上の上司との面談を設けて、その上司がいかに酷い人間かという事を訴えていました。
自己愛さんは本当に権力や肩書、スペックが大好き。
特に、権力者へ被害者アピールは怠りません。
加害者から被害者へと早変わりの瞬間です。
産業医である花谷隆志先生の論文内でも、自己愛さんはこのような特徴的な行動をとると書かれています。
論文によると、自己愛の特徴を持つパワハラ上司の行動パターンは以下の通り。
1.自分の立場が危うくなる
自分のパワハラにより、ターゲットである部下が精神的不調を起こす。
↓
2.周囲へ被害者アピール&印象操作
先回りして産業医である花谷先生の元へ、その部下がいかに不真面目な人間であるか熱弁。
↓
3.矛盾を指摘されると激昂
花谷先生がその内容の矛盾点を指摘すると、パワハラ上司は激昂。
理解不能な主観を並べはじめて、自己正当化。
↓
4.部下が自主退職
部下が自主退職し、パワハラが明るみに出た。
このように、立場が危うくなった自己愛さんは、先回りにして権力者や周囲の人に「自分は正しい」と吹き込んでおくのです。
このケースでは産業医の花谷先生がとても冷静な判断ができたため、パワハラが証明される結果となっています。
しかし現実は、自己愛さんの巧妙な話術に飲まれてしまう人も多いはずです。
もし、自己愛の話術に周囲が飲まれていたとしたら…。
部下の自主退職は「出来の悪い職員が、勝手に精神病んで自分で辞めてった」という結果になっていたかもしれませんよね。
加害者から被害者になるのが得意
自己愛さんたちは「常に自分が正しい」「自分が正しくないと死ぬ!」と強迫的に思っています。
そのため、何か問題が起きると人のせいにして乗り切ります。
つまり、自己愛さんたちはどんな事が起きても常に被害者です。
私の体験から具体的なケースをお話しすると、自己愛さんが毎日嫌がらせをしていた相手に反撃された事があったんですよね。
いつも大人しいターゲットに、「もう私に関わらないでください!」と、怒鳴られました。
すると、自己愛さんは周囲に
「急にこんな暴言を言われて…酷いよね…。」
「あの人って、急にプッツンしたようにキレるあぶない人なんだよ。」
「みんなも気を付けな~。」
と、吹き込む吹き込む…。
いや、キレられるような事毎日しているのはどっちだよ。と、思いつつも何も言えませんでした。
そして恐ろしいことに、何も知らない人は自己愛さんからのその悪口を信じてしまうんですよね。
このように、自己愛さんたちは加害者から被害者へと早変わりする事で、巧妙に周囲をコントロールします。
また、惨めさを誇示する事は周囲をコントロールする事にも役立ちます。
被害者ヅラをしたり、可哀そうな自分を表現すると、周囲の人は助けてくれる事を知っているんですよね。
私の職場の自己愛さんは、常に病弱でした。
何か都合が悪いと身体が弱い事を持ち出したり、持病をアピールしたり。
ある日、自己愛さんは私を含めた後輩たちに仕事を押し付けて、1日中ネットサーフィンをしていました。
さすがの後輩たちも、機嫌が悪くなり、不穏な空気に。
すると、後輩たちの不機嫌を察知した自己愛さんは
「私は今日朝から具合が悪かったの…。」
「朝から、持病がね…。」
「もう、フラフラだから早退させてもらいますね…。」
と、急に具合が悪くなり帰っていきました。
客観的に見ていて、仕事をさぼっていた自分を正当化する姿は滑稽でしたね。
まとめ(自己愛性パーソナリティ障害の行動パターン)
いかがでしたでしょうか。
① 自己愛さんはターゲットを決め、意図的ではないように見せかけて孤立させる
② 自己愛さんがいる職場は周囲の加担や沈黙が起こる
③ 立場が危うくなった自己愛さんは周囲に被害者アピールをしだす
④ 自己愛さんは加害者から被害者へ変わるのが得意
このように自己愛性パーソナリティ障害の人は、職場内で特徴的な行動をします。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。
そして、自己愛さんの被害者はこんなにも多いのに、人に被害を訴えてもイマイチ伝わらないんですよね。
私は、企業は「自己愛性パーソナリティ障害のマニュアル」を作った方がいいと感じています。
人事や役職者に配布し、理解を深める必要があると思います。
上司や人事の人が理解し、適切な対処をとらないと会社にもマイナスです。
自分の事しか考えない百害あって一利なしの職員が残り、真面目に働いてくれる社員が退職へと追い込まれてしまうのです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
(参考文献:職場におけるハラスメントの病理構造・花谷隆志)