自己愛性人格障害(自己愛性パーソナリティ障害)の人がいる職場は崩壊していきます。
それは自己愛さんは周囲を巧妙にコントロールし、周りからは確認できないいじめの構図が出来上がるからです。
職場崩壊の4条件、「自己愛的病理を持つ行為者、加担する同僚、黙認する同僚、沈黙する被害者」とは。
労働者の精神不調の専門医である花谷心療内科クリニックの花谷隆志先生の論文「職場におけるハラスメントの病理構造」と自己の体験に基づいて解説していきます。
自己愛が職場内でターゲットを作る理由
自己愛性人格障害の人は「理想の自分像」を強く持っています。
あなたの職場内の自己愛さんも、優秀で有能な超絶パーフェクトな自分でいたい!と、強迫的に思っているはず。
しかし、現実社会はそんなに甘くなく、自分より優秀な社員もいれば、うまく成果を出せない事もあります。
そうすると、自己愛さん達はどうしようもない怒りに支配されてしまうのです。
職場内での自己愛さんは「理想の自分」と「現実の自分」の乖離に苦しめられ、常にイライラしているという事。
そして、そんな自己愛さんの怒りを収める術はただ一つ、ターゲットの感情を台無しにした時に感じる万能感です。
自己愛さんのイライラは、この破壊的万能感でしか癒されないのです。
つまり、攻撃の目的は「誰かを最低の気分にさせる事ができれば良い」これだけ。
自己愛がいる組織は崩壊する4つの理由
自己愛がターゲットを攻撃している際に、周囲の人には3つの選択肢があります。
- 攻撃をやめろと正す
- 自己愛に加担する
- 見て見ぬふりをする
まず、①の「攻撃をやめろと正す」を選択をする人はほぼいません。
私が長年、自己愛さんがいる組織にいて感じたのが、ごく少数の人が自己愛に加担し、ほぼ大多数の人は見て見ぬふりをします。
そして、この集団の選択が組織崩壊へと向かっていくのです。
1.攻撃を辞めろと正した人はターゲットに
まず、自己愛さんによるターゲットへの攻撃が起きている組織で「攻撃をやめろ」と正す人はほとんどいません。
なぜなら、自分がターゲットにされると容易に想像がつくからです。
以前の職場で、1人だけ自己愛さんに立ち向かった同僚がいたのですが、すぐにターゲットにされてしまい退職へと追い込まれました。
その時の自己愛さんの迫力と言ったら、「あいつが私の悪口を周囲に吹き込んでる!絶対辞めさせてやる!!」と、鬼気迫るものがありました。
このように正義感が強く、自己愛さんの間違いを正そうと立ち向かった人は退職や休職に追い込まれ、組織がから姿を消します。
2.劣等感が強い同僚は加担する
同僚の中にはターゲットになりたくないあまりに、自己愛さんに加担するものもいます。
私の経験上、劣等感が強い人ほどその傾向は強いと感じました。
自己愛さんは常にターゲットを作り、周囲を巻き込んで攻撃し、自分より下の人を作って安心します。
そして、その異常さに気づいていながらも、加担する同僚が一定数います。
論文内では「加担する同僚の動機はターゲットになりたくなくて」と説明されていましたが、私は近くで見ていて一種の「正義中毒」のような感じだと思いました。
自己愛さんは独自の価値観で「あの人が悪い!あの人が間違っている!」と、周囲に吹き込みます。
すると、劣等感が強く、強いものにNOと言えない共依存タイプ人ほど、自己愛さんの価値観に同調し、正義中毒のような状態に陥るのです。
集団で「あの人はおかしい!」と批判する事で、悦に浸っているように見えました。
それは、満たされない現実の不満をチャラにしてくれるほどの快感と中毒性があるようです。
3.ほとんどの人は見て見ぬふり・口を閉ざす
自己愛さんがいる組織ではいじめのような空気があるにもかかわらず、ほとんどの人が口を閉ざします。
なぜなら、余計な事をして自己愛さんのターゲットになりたくないと思うからです。
私も、自分以外の人がターゲットの時は「気の毒だな…。」と思いながらも見て見ぬふりをするしかありませんでした。
さらに、表面上上手くやるしかないので、自己愛さんの愚痴や不満を「うんうん。」と合わせて聞く事もしばしばありました。
しかし、沈黙している人同士の気持ちは同じです。
沈黙者の同僚たちで、自己愛さんや加担している同僚たちに見つからないように、ご飯やお茶に行き「恐ろしいよね…。かわいそうだよね…。」とよく話し合っていました。
現在、沈黙している人は、同じポジションにいる理解者を見つけて気持ちを共有すると少し気持ちが楽になります。
4.周囲からは確認できない「いじめ」が出来上がる
このように、自己愛さんは巧妙に周囲を巻き込んでターゲットをいたぶります。
自己愛さんの目的はターゲットを最低最悪な気持ちにさせる事。それによって感じる万能感を得る事です。
こうなってくると被害者は沈黙します。
何を言っても、周囲を巻き込んで自分が悪いとされるため、沈黙するしかないのです。
または、巧妙な話術で「被害者のためを思って言っている」「被害者が悪い」と本気で思わせる事もあります。
こうして、第三者には確認できない「いじめ」が出来上がります。
自己愛さんは上司や、他部署の人からは良い人、優秀な社員と思われている事が多いと言われています。
以前、ターゲットになり退職してしまった同僚が「あいつは周りにわからないように上手くやる」と言っていました。
実際に自分がターゲットになり、その言葉を心から理解しました。
本当に憎らしいけど上手なんです。
まとめ(自己愛がいると職場が崩壊する理由)
産業医でもある花谷隆志先生の論文と自己の体験を元に、職場が崩壊する理由を解説致しました。
① 自己愛さんは理想の自分と現実の自分の乖離にイライラしている。
② 自己愛さんは「誰かを最低の気持ちにさせた時に感じる万能感」で、そのイライラを解消させる。
③ そのため、常にターゲットを作り周囲を巻き込んでいじめの空気を作る。
④ 同僚はターゲットになる事を恐れ、一部は加担し、多数が黙認。
⑤ 被害者は沈黙する選択肢しか無く、第三者が確認できないいじめの構図が出来あがる。
現在、職場の自己愛さんに悩んでいる人はこちらの記事も参考にしてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
(参考文献:職場におけるハラスメントの病理構造・花谷隆志)